汲フ目貼りがとられた。帰って来てちっとも知らずにドアをあけた伸子は、室へふみこんだとき彼女に向ってなだれかかって来た騒音にびっくりした。雪のある間は静かすぎて寂寥さえ感じられた周囲だのに、窓の目ばりがとれたら、アストージェンカのその小さな室はまるでサウンド・ボックスの中にいるようになった。建物のすぐ前の小高いところにフラム・フリスタ・スパシーチェリヤの多角型の大|伽藍《がらん》が大理石ずくめで建っているせいか、すべての音響が拡大されて伸子の室へとびこんで来た。電車は建物の表側のあっちを通って、そんなひどい音を出す交叉点らしいところもないのに、一台ごとにどこかでガッタン、ギーと軋む音を伸子たちの室へつたえた。その最中は話声さえ妨げられた。しかし伸子は春と一緒に騒々しくなった自分たちの室をきらう気にならなかった。見馴れた夜の広場の光景に、今夜から音が添って眺められる。それは、北の国の長い冬ごもりの季節のすぎた新鮮さだった。
テーブルのところで、昼間買って来た「赤い処女地」を見ながら素子が、
「きょう、ペレウェルゼフが、ゴーリキイについて一時間、特別講演をしたよ」
と言い出した。
「まあ、
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