オい独占的な情のこわさと、その娘で、その情のはげしさやこわさでよく似ている自分とが、向きあっている姿を感じるのだった。
外套をぬいで水色のブルーズ姿になった伸子は、ちょっと長椅子にかけていた体をまたおこして、清潔につや出しをされた茶色の床の上をあっちこっち歩きはじめた。
保の心のやわらかさは、こうして伸子に自分の心のきめの粗雑さを感じさせ、そのことで恥しささえ感じさせている。多計代のきらいなところが、自分にあることをかえりみさせる。だけれども、そうだからと云って、保の心の柔かさにうたれることで、伸子は自分の生きかたを保の道に譲ってしまうことは思いもよらなかったし、保のゆえに多計代の生きかたと妥協してしまうことも考えられなかった。
二重窓の前に立ちどまって、かすかにモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の冬の日向のぬくみがつたわっている内ガラスに額をおっつけ、黒い鉄骨と日かげに凍りついている薄よごれた雪を見ながら、伸子は心に一つの画面を感じた。そこは海の面であった。海の面はこまやかな日光にきらめき、時々雲が通りすぎると薄ら曇り、純粋でいのちをもっている。そのむこうに断崖が見え
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