スのに、多計代は、あけて、先によんでいる。そして高校の入学祝に温室をこしらえて貰ったということについて伸子のかいたことに対して、保の考えはどうかということなどにかまわず伸子に挑みかかって来ていた。
激越した筆致で、多計代は、保が、いまどきの青年に似ず、どんなに純情で、利己的なたのしみをもっていないかということを力説した。
「その彼が唯一のたのしみとしている温室のことを、あなたはどういう権利があって、難じるのですか。人間として、母として、私は抑えることの出来ない憤りを感じます。あなたは刻薄な人です。これまで永年の間、私がそれで苦しんで来た佐々家の血統にながれている冷酷な血は、あなたの心の中にも流れています。そのあなたが、ロシアへ行ってからの生活で――」
そこまで読んで、伸子はその手紙を握りつぶしてしまいたい衝動を感じた。多計代は、何という云いかたをするだろう。伸子が佃と結婚すれば結婚してから、離婚して吉見素子と暮すようになれば吉見と暮すようになってから、伸子は冷酷になったとばかり云われて来た。ロシアへ来れば、多計代は偏見や先入観を一点にあつめて、ロシアへ行ってから伸子はいよいよ刻薄に
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