ヤもなく劇場へゆく時間だからと、出かけて行った。
おもに素子とヴェラとが話した。未来派の詩をかいていたケンペルは、革命後|同伴者《パプツチキ》の文学グループに属し、直接社会問題にふれない動物とか自然とかに題材をとった散文詩のようなものをかいていた。フランス古典では、ロスタンの「シャンタ・クレール」があり、現代ではコレットという婦人作家が、動物に取材して気のきいた作品をかいているというような話がでた。体つきも小柄なヴェラは、行ったことがあるのかないのか、芸術や服装についてはフランス好きで一貫しているらしかった。ヴェラのかいた「動物の生活」の話が出た。
「いかがでした? 面白かったですか」
ヴェラが興味をもってきいた。素子が、あっさりと、
「むずかしいと思いました」
と云った。
「一つ一つの字より、全体の表現が……」
「――あなたは? どう思いました?」
伸子の方をむいて、ヴェラが熱心にきいた。
「わたしのロシア語はあんまり貧弱で、文学作品はまだよめないんです」
「――だって……」
ヴェラ・ケンペルは憂鬱な眼つきでドアの方を見ていたが、やがて、
「わたしたち現代のロシア作家は、すべ
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