骰。日のロシアの意志に冷淡でいられなかった。同時に、これらすべての上に、毎夜十二時、クレムリンの時計台からうちならされるインターナショナルのメロディーが流れ、その歌のふしが、屋根屋根をこえて伸子の住んでいるホテルの二重窓のガラスにもつたわって来ることについて、だまっていられなかった。雪に覆われたモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の軒々に、朝日がてり出すと、馬の多い町にふさわしくふとったモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の寒雀がそこへ並んでとまって、囀《さえず》りながら、雪のつもった道の上に湯気の立つ馬糞がおちるのを待っている。そんな趣も伸子の眼と心とをひきつけた。
 伸子のかくたよりに現れる生活の描写は、こうして段々即物的になり、テンポが加わり、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の社会生活の圧縮された象徴のようになりつつあった。きょうの手紙にもあったようにウメ子が校正ののこりをひきうけてくれて、そろそろ本になろうとしている長い小説を、伸子は、ごくリアリスティックな筆致でかきとおした。それがいつとはなし、即物的になり、印象から印象へ飛躍したテムポで貫かれるよ
前へ 次へ
全1745ページ中177ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング