eしいつき合いの人なら、その客のいるところでも、必要に応じて伸子のいわゆる「家鴨《あひる》の水くぐり」が行われた。ときには多計代が、何かさがしていて、どうも見えないね、というやいなや、伸子が音頭をとって、テーブルについている四人の息子や娘たちが一斉にテーブルの下へ首をつっこんで、わざと尻をたかくもち上げ、家鴨のまねをした。
 その食堂の煖炉《だんろ》棚の上には、泰造の秘蔵しているギリシアの壺が飾られていた。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ立って来るについて伸子が駒沢の家をたたんで数日動坂で暮した間、その煖炉のギリシア壺のよこに大きなキルクが一つのっていた。毎朝掃除がされているのに、何かのはずみで一旦その場ちがいなところへのったキルクは、何日間も煖炉棚の上でギリシア壺のわきにあった。そして、もう今ごろそれはなくなっているだろう。いつの間にか見えなくなった、という片づきかたでキルクは煖炉棚の上からなくなり、その行方について知っているものはもう誰もいないのだ。
 こういうけたはずれのところは主婦である多計代の気質から来た。もし多計代が隅から隅までゆきとどいて自分の豪華趣味で統一
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