激Sーリエヴナが熱心と不安のまじりあった表情で、新しい本の第一頁を開き、カデットとか、エスエルとかいうケレンスキー革命政府ごろの政党の関係を説明してくれた顔つきが思いだされた。そういういりくんだ問題になると、伸子の語学の力ではマリア・グレゴーリエヴナの説明そのものが半分もわからなかった。針に糸をとおしながら、伸子はあっちの窓下の緑色がさのスタンドにてらされたデスクで勉強している素子に声をかけた。
「あなた、ちかいうちに国際出版所《メジュナロードヌイ》へ行く用がありそう?」
「さあ……わからない」
「行くときさそってね」
「ああ……」
カデットとかエスエルとか、そのほかそういう政治方面の辞書のようなものが必要になって来た。
伸子は、気がついて、保か河野ウメ子かにたのんで日本語のそういう辞典を送ってもらうのが一番いいと思いついた。日本でもそういう本はどんどん出版されていた。言海はモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へももって来ているが、社会科学辞典がこんなに毎日の生活にいるとは思いつかなかった伸子だった。あんなに用意周到だった素子も蕗子もそのことまでにはゆきとどかないで来てしま
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