フために心も身も休まらずにいる伸子にむかって。――素子にしろ日本の習俗がそういう習俗でなかったら、もっと自然に、素子としての女らしさを生かせたのに――。
「自分で、日本のしきたりに入りきれずにいるくせに、日本人病なんて――。おかしい」
と伸子は云った。
「矛盾してる」
「――ともかく、さきへ手をあげたのは、わたしがよくなかった。それはみとめますよ」
思いがけない素直さで素子が云い出した。
「実は、幾重にも腹が立つのさ」
「なにに?」
「先ず自分に……」
そう云って、素子は、うっすり顔を赧らめた。
「それから、ぶこに――」
「…………」
「ぶこが、どんなに軽蔑を感じているかと思ってさ――腹んなかに軽蔑をかくしているくせに、なにを優等生|面《づら》して! と思ったのさ」
「軽蔑しやしないけれど……でも、あんなこと……」
自分の前に来て立った素子を見あげて伸子はすこしほほえみながら涙をうかべた。
「ここのひとたちの前から、まさか、かけて逃げ出さなけりゃならないような暮しかたをしようとしてやしないんだもの――」
六
壁紙のないうす緑色の壁に、大きな世界地図がとめてあ
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