」
リン博士の言葉は、しずかで、柔らかくて、心にしみる響があった。伸子は、自分が、リン博士との話の間で、はじめからしまいまで、わたし、わたし、とばかり云っていたことに気づき、自分というものの存在のせまさが急に意識された。そして伸子は、はずかしさを感じた。
けれどもリン博士は、きいている伸子のこころがそんなに激しく動かされたことに心づかなかったらしく窓の外の雪の宵景色を眺めたまま、
「中国の民衆には、大きい、巨大と云ってもいいくらいの可能がかくされています――男にも、もちろん女にも。――ところが中国の人々は、まだその可能性を自覚しないばかりか、それを自覚する必要さえ理解していないんです」
ふっと、情愛のこもった笑顔を伸子に向けて、リン博士は、
「あなた、孫逸仙大学の女学生たちを見ましたか?」
ときいた。
「あの娘たち――みんなほんとに若くて、未熟でさえあるけれど、熱意にあふれているんです。――可愛い娘たち――そう思いませんか?」
その Don't you think so?(そう思いませんか)というききかたには、どんなひとも抵抗できないあたたかさと、思いやりとがこもっている。ほん
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