チて来たアーケードとは反対の広場のはずれに、一軒のカフェーと、短い家なみをなして店鋪が並んでいる。それらの店は防火扉をしめて、カフェーだけがあいていた。袋のような広場からの一方の通路はその一廓にあいている。
 高い建物にかこまれた広場のまんなかで足をとめ、そのままどこやら物々しい光景を見まわしている伸子と素子。一人は柔かい灰色アンゴラのファーつき外套を着、もう一人はラクダ色の外套を着て自分たちをむき出しに広場をかこんで止っているトラックの上からの環視にさらしたまま、佇んでいる伸子と素子。そのときその場にいあわせた並の身なりの人間と云えば、こういう伸子と素子の二人ぎりだった。それはどこから見てもポーランド語の話せない外国婦人の風体であり、その場の事情にうといものだけが示す自然で無警戒なそぶりだった。伸子たちは、次第にここの広場の空気のただならなさを感じるにつれ、どっちからともなくまた歩き出して、
「もうすこしあっちへ行こうか」
 カフェーが一軒、店をあけている広場のはずれへ近づいた。そこからふりかえってみると、雨あがりの空からうすくさしはじめた陽の光が、高い建物にさえぎられて、広場の半分どころまでに注いでいる。石だたみの奥半分は寒々とした陰翳の中におかれていて、どぎつい明暗は見るからに陰気な広場だった。
 伸子と素子とが、あらましその附近の様子を会得したときだった。カフェー側から見て右手の通りに向って三台一列縦隊にならんでとまっていた先頭のトラックから、一声、伸子たちに意味のわからない叫び声がおこった。それは何かの合図だった。忽ち、そのトラックにいたカーキ色レイン・コートの連中が棒を片手にトラックの両側からとびおり、あとにつづく二台のトラックから同じようにしてとびおりて駈け集った連中と一隊になって、す早く、その狭い右手の町口にかたまった。何事かがはじまった。そのときになって、伸子たちは発見した。自分たちのまわりがいつの間にか群集でかこまれている。どこから、いつ、これだけの人が出てきたのだろう。ついさっきまで、広場には、カーキ色の連中のほかに、伸子と素子の姿しか見あたらなかったのに。無気味に、がらんとしていた広場だったのに、いま伸子たちが爪立って前方を眺めようとしている横通りへの出口あたりは、黒山の人だった。その群集の頭ごしに、まだかなりの距離をもってこちらへ向って進ん
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