カ化連絡協会)は、伸子たちの泊っている元ウラジーミル大公の邸、ドーム・ウチョーヌイフ(学者の家)の通りを三位一体橋の方へゆく左側にあった。木煉瓦のしきつめられたそのあたりの通りは広くて、いつも静かで、ヨーロッパの貴族屋敷らしい鉄柵のめぐらされた庭の六月の青葉の茂みが歩道の上まで深く枝をのばしている。冬宮の周辺のそのあたりには、まるで人気のない建物があった。同じ広い通りの右側に、鉄柵のめぐらされた大邸宅が一つあった。槍形に尖《とが》った先が金色につらなっている鉄柵ごしに、窓々のかたく閉された館《やかた》が見え、ぐるりに繁っている雑草とその雑草に埋もれて大きい車寄せの石段が見えた。規則正しい輪廓を夏の外光に照りつけられている石造の人気ない大きなその家は、物音のすくないその通りにひとしお物音を消して立っていて、伸子と素子とがその長い鉄柵に沿った歩道を行くと、とかげ[#「とかげ」に傍点]が雑草の根もとを走ってかくれた。
寂しいその通りは、三色菫の植えこまれた花壇が遠くに見える公園へ向ってひらいた。その左角の鉄柵に、レーニングラード※[#二分ダーシ、1−3−92]ヴ・オ・ク・ス(対外文化連絡協会)の白く塗られた札がかかっていた。瀟洒《しょうしゃ》な鉄門の左右からおおいかぶさるように青葉が繁っていて、高い夏草の間に小砂利道がひと筋とおっている。その門内にはいって伸子たちはおどろいた。そこは廃園だった。楡の枝かげの雑草のなかに、壊れた大理石の彫刻の台座の破片が二つ三つころがっていて、茂みのむこうは、河岸通りの見える鉄柵だった。そこにネ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の流れが見えていた。濃い夏草と楡の下枝のむこうの鉄柵ごしに見えるネ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の流れは、伸子がほかのどこで見たよりも迅く、つよく流れているようだった。その水音が聴えて来るかと思うほどひっそりとした真昼の小砂利道は、ドアの片びらきになっている一つの戸口へ伸子たちを導いた。奥の方へつづいた大きい建物のはずれにあいているそのドアは、事務所めいたところがどこにもなくて、外壁に改めてかけられているレーニングラード※[#二分ダーシ、1−3−92]ヴ・オ・ク・スの札がなければ、あたりの人気なさは伸子たちに自分たちを侵入者のように感じさせそうだった。
伸子たちは、タイプライターの音をたよりに二階の一
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