ニ同じに、カンタロープその他の高級品をさすこともわかった。ヴォージラールあたりのちょっとした店では、ごく新鮮とは云えない桜んぼうを売っているが、ムロンはおいてはいないのだった。
タイプライターのおいてあるホテルの室の化粧台の上に、チーズや桜んぼうをひろげて二人で食べながら、伸子は、フランス婦人が、ウクライナの畑にころがっている西瓜を見て、あんなに愉快そうに、おどろいた顔をしたときのことを素子に思い出させた。
「そう云えば、ほんとにあのひとは感動したと云えるぐらいの顔つきだった」
「わたし、いま、わかったようだわ。あのひと、もしかしたら、あの畑の西瓜を、パリのムロンと同じものだと思ったんじゃないかしら。夕方だったし……」
「なるほどね」
「ここじゃ、鶏って相当の贅沢でしょう? ロシアではもっと日常性をもっているわ。丸やきの鶏をあのひとお弁当にもっていて、それもロシアの田舎風のゆたかさと思っていた上に畑ではデザートのムロンがごろごろしているって、心をうたれたのじゃないかしら。――無理もないわねえ。ソヴェトのゆたかさ、たっぷりさ。それと同じくらいきびしい欠乏。毎日、そのコントラストだから」
伸子は、桜んぼうの種を手のひらにほきだしながら、笑って、
「ああ、わたし、あの女のひとが、いまフランスが先棒の反ソ十字軍に加っていないことを希望するわ」
と云った。
「わたしたち、あのひとは、どこでしたっけ、あの乗換駅。――あすこでわかれちゃったでしょう。もし、あのひとがあとでムロンを買ってたべようとして、ただの西瓜だったとわかって、ひどくがっかりでもしようものなら、危険だわ。ロシアもこれだから幻滅だなんて思うかもしれなくてよ。共産主義の国は、なんて、天気のわるいことも西瓜のことも、何からでも悪口を云うんだもの」
伸子は好奇心をおこして、字引をひきはじめた。
「ムロンはムロンだろう?」
「そうかしら。でも西瓜は水《スイ》がつくもの」
西瓜《ウォーター・メロン》という字からひいたら、そこには|水の瓜《ムロン・ドウ》あるいはパステクと植物の学名のような字があった。
六
マロニエの若葉に明るく光って降っていた午後のとおり雨は、日暮れに近くなってからあがった。
「いい気持の夕方になったねえ」
バルコンに立って、素子は西空を眺めながら爽やかな空気を吸いこんだ。
「
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