烽ソのいい智慧のようなものを感じた。同時に、五ヵ年計画によって変化している現実は、こういう共産党員でないあたりまえの人々の存在とその活動の評価についてこれまでとちがった考えかたを肯定しはじめて来ているとも感じたのだった。
「成功に眩惑するな!」プラカートのスローガンは、きょうのメーデーの華々しさのすべてをその底で支えている冷静なつよい力のあることを伸子にあたらしく感銘させながら、だんだん人波のかなたに遠ざかって、やがては、のび上っても、もう伸子の立っている場所からは見えなくなってしまった。
 暫くの緊張からとかれた伸子のぐるりに、ふたたび、群集のどよめきと、赤い広場からのウラーが甦って来た。
「ことしのメーデーって、何だかいろいろ内容があるようだわ」
 人の流れにしたがって、もと来た道をトゥウェルスカヤ通りの方へ戻りながら、伸子は、複雑なことを単純にしか云いようがない風でつれだっている素子に云った。
「そう言えばそうだな」
「元気がいいっていうばかりじゃなく。――さっきのプラカートみたいなところ――元気よさに、新しいたて[#「たて」に傍点]の深みみたいなものが出ているでしょう?」
 その底のたしかさを、伸子は、胸のうちにうけとったように感じるのだった。

        十二

 このメーデーに、日本では川崎に武装した労働者の行進が行われた。
 プラウダに次々報道される各国のメーデーのニュースのなかに、そういう記事を見出したとき、伸子は、衝撃をうけた。伸子は、日本がどういうことにか成ったかと思った。
「革命的な数百名の労働者が武器をもって行進したってあるけれど――でも、なぜ?」
 一九一八年の米騒動のときのような意味があるわけではないらしかった。武装するということも全国的に行われたのではなくて、そんなことのあったのは川崎市でだけのことらしかった。
「武装したなんて、変なみたいな話だな。どうせおまわりとぶつかるのが関の山なんだろうのに、武装なんて――」
 伸子たちの部屋の入口よりにおかれている補助ベッドに腰かけている若い画家の蒲原順二が、素子の不審を註釈するように、
「このごろ、とてもひどいですよ」
 伸子たちの知らない日本を説明した。
「市電のストライキのときだって、従業員はしずかにしていたのに、いきなり催涙弾をぶっぱなしたんですから」
「あなた、ごらんになったの?
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