梶sセル・マシストローイ》で、これだけのトラクターをつくらせ、ソヴェト・フォードで幾台の自動車を生産させ、粉挽き工場は、古風な風車の翼が風のない空に止っているのを心配しなくてもパンにする小麦粉をこんなにどっさり製粉するようになるだろう。雄大なドニェプルの流域にひらけようとしている生産の諸能力が、子供の生活にぴったりした小麦袋だの耕作機械だの、学校だの、統計図で描かれているのだった。画家はデニカだった。ソヴェトの若い画家の中でもきわだって明快で動的な才能をもっている彼が、これだけ力をこめて五ヵ年計画の絵物語を描いてゆくときには、彼のこころにも新しい希望があったろう。去年の冬のように、ウィンター・スポーツの絵ばかり描いているより、張りあいもあっただろう。
 デニカは、反ソヴェト・カンパニアに反撃するためのポスターにも、効果的な諷刺を描いていた。長大な砲身が、ぬっとソヴェト同盟の赤い地図に向ってのびている。黒光りする砲身の先端に、法冠をかぶった法王がまたがっている。彼は法笏《ほうしゃく》をふって指揮している。その背後にくっついて、あらいざらいの勲章を下げて双眼鏡と地図をもっている軍人。※[#「「卍」を左右反転したもの、348−1]《さかまんじ》のしるしをつけたイタリーとドイツのファシスト。しんがりにはシルクハットをかぶった燕尾服姿の太った男が砲身にまたがっている上体をかがめて足もとにつみあげた金袋に手をかけている。五ヵ年計画を四年で! というスローガンのあるところには、きっとそのポスターも貼られていた。二つのものがひと組みとなって、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]のあらゆるところで伸子の目にふれる。それにはそれだけの必然があった。反ソヴェト・カンパニアは、国境の八方から五ヵ年計画が水泡に帰すことを切望していた。五ヵ年計画は不可能事だと喧伝しながら、ソヴェトの社会主義建設を破壊するためには、最高政治指導部のなかにまで、世界反革命の組織がはいりこもうとしているのだから。――ブハーリンの問題はパリにいた伸子を衝撃した。
 七ヵ月という時は、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で平たく経過したのではなかった。その時間に、ソヴェトの人々は、自分たちの社会主義社会の本質を決定的に高めるために奮闘した。伸子が二年の間モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で見聞
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