級ハ彼女は、もう一つ同じ型の鞄を買うことにした。
「とどけさせるの?」
伸子がきくと、
「もてますでしょう、看護婦さんがいますし、どうせタクシーですから……」
軽いけれども嵩《かさ》ばるカバンを両手に下げて、須美子は、やっときょうの買物の予定はすんだ、という表情になった。伸子たちはプランタンのなかの食堂で、あまりおいしくもない昼食をすました。そして、十四日の午後二時に須美子のデュトのうちへ行く約束をして、百貨店の前からタクシーにのった須美子の一行とわかれた。佐々の両親がパリを立つのもいずれ月末のことになっているし、双方の出発の日がせまらないうちに、伸子は須美子のために小さい計画を思いついたのだった。
八
今夜からは、両親のいないペレールの家の寝室につや子とねることになった。そこへ入って行ったとき、伸子は、何となしはじめて案内されたホテルの室でも見まわす時のような視線で、古風にどっしりとした室内を眺めた。
このアパルトマンの四つの部屋のうち、伸子にとっていちばんなじみのないのが、両親の寝室であった。片隅に重々しく衣裳箪笥が立っていて、窓よりの壁の前では、化粧台の鏡の面に電燈に照し出されて室内の一部が映っている。大形トランクやスーツ・ケースが壁の下におかれていることは、日頃見ているとおりだったが、二つ並んでいる寝台の間にはさまれて立っている枕もとの小テーブルの上は、スタンドのほか何もなく、きちんととりかたづけられている。いつもはその上に、狭いばかりごたごたと、ものがおいてあるのに。
多計代が、そのように始末して出かけたのはめずらしかった。そろそろ着ているものをぬぎながら、何となしその枕もとの卓のあたりに目をやっているうちに、伸子は、あ、と思いついて、頭からぬぎかけているスウェターの、毛糸の匂いのするなかで目を見ひらいた。いつもはそこに保の分骨を納めた例の錦のつつみものが置かれていたのだった。そして、そのまわりにセイロンの象牙でつくった象の親子だの、金糸とビロードでこしらえた花かごだのが、飾られていたのだった。
そういえば、多計代はけさ家を出るときコバルト色に朱を細い縞にあしらった自分の旅行バッグを手からはなさなかった。多計代はジェネ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ保をつれて行ったのだ。あすこに保がいれられていた。
それにつれて、
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