Gッフェル塔のイルミネーションが、遠い空の中で今夜もシトロエン・シトロエン・6シリンダー・6・6と休みなくまたたいている。
蜂谷良作は、露台の欄干に肱をかけ、遠くエッフェル塔をたてに走っては光っている字を眺めた。
「久しぶりだなあ、パリの夜の景色――やっぱり、いいな」
「クラマールって、そんなに淋しいところ?」
「まわりが田舎ですからね。こんな都会の夜の気分は全然ないですよ。その代り歩きまわるにはいいけれども」
廊下ごしの自分の部屋に行っていた素子が、ねまきや枕や洗面道具などを腕にかかえて、伸子の方へ運んで来た。蜂谷が椅子から立ち上った。
「何か手伝いましょうか」
「いや、もうこれでいいんです」
素子も露台のところへ出て来て腰をおろした。
「ここからの街の風景は昼間も面白いですよ、ペレールあたりなんかより、ずっと趣がふかい。生活があふれているからね」
「そりゃそうだわ、あっちで見えるのはブルヴァールの並木だけですもの」
蜂谷良作はペレールへ佐々泰造を訪ねて、アパルトマンも知っていた。彼がパリにいることが伸子と素子にわかったのも、泰造が偶然知人のところでそこに来合わせていた蜂谷良作にあって、話が出たからのことなのだった。
段々ひえて来る夜ふけの空の下で、蜂谷良作は伸子と素子とに、くも[#「くも」に傍点]の巣のようにいりくんで互に連関しながらはりめぐらされているフランスの国際金融資本の動きと、それによって養われている十字火団《クロア・ド・フウ》のようなフランスのファシスト団体の話をした。その中核であるパリ・オランダ銀行の総裁のフイナリはアメリカのスタンダード石油のフランス代表であり、ドイツの銀行、電気、化学工業トラストに関係していて、大戦中はドイツから資本の出ているノルウェイ窒素の重役としてドイツへ硫酸ソーダを供給していたので、大戦後はイタリーへ亡命していた。
「それが、いつの間にかかえって来て、総裁になっている。パンルヴェ内閣にモロッコ戦争をやらせたのは、この男だ。ウェイガン将軍だとか、リオーテだとか、フランスの参謀本部はかいらい[#「かいらい」に傍点]だからね。イギリスの参謀本部だって、日本の三井だってスイスからニュージーランドの軍需資本家までがフランスのシュネーデルと結びついている。軍縮会議がまとまらないのは当然なわけさ。戦争の危険がほんとになくなられて
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