同じ娘でも
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)許《ばかり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)火を吹いて居[#「て居」に「ママ」の注記]下女の
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「御隠居様よ、又お清が来ましたぞえ何なりと買ってやりなんしょ」と頬を赤くして火を吹いて居[#「て居」に「ママ」の注記]下女の正は台所から声をかけた。「そうかえ」と云いながら茶の間から出ていらっしゃったお祖母様は、玉の大きいがんこな目がねを片[#「片」に「ママ」の注記]ににぎったまま中の [#「 」は欠字]に行らっしゃる。私も何かと思ってそっと後からついて行って肩越にのぞくと年は私と同じぐらい、うすよごれた袷を着て去年の盆にかってもらったらしい下駄をはいて片手に包をさげたままではずかしそうに青い顔の頬のあたりをうすくれな[#「れな」に「ママ」の注記]にそめてうなだれて立って居る。お祖母様は「遠慮しないでもいいよ、そこにおかけ今日は何を持って来たかえ」とおっしゃると娘はだまったままで包を開くとライオンのふる箱の中に少し許《ばかり》の巻紙と筆と封筒が入って居た。「今日はもう
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