愛護デーというので外国から来ている貴婦人たちが天皇の子息である少年を左右から囲んで「なごやかな交歓」をした写真が二面に出ている。その一面には三十一日来四十時間のとりしらべののち五年、七年、十年と重労働刑を判決申しわたされた八人の日本の若ものたちの姿がのせられていた。(『朝日新聞』六月四日)飼主の命令のままに馴らされ、使役される犬猫から牛馬のたぐいは人道的なひとびとによって組織されている愛護デーをもつ。犬を愛するものも愛護される。だが、独立の人間としての理性から自由を愛し、より多くの社会人の生活の安定が見出されなければならないと判断するひとびとは、社会的発言と活動にカセをはめられた。孔雀の羽根に身をかざったおろかな烏や虎の威をかる狐のものがたりを書いたイソップは、奴隷であった。イソップ物語はきょうに生きつづける。だが、イソップの主人であった奴隷使役者の名前を知りたいと思う子供はいない。
[#地付き]〔一九五〇年六月〕
底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百
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