っきり女の賃銀とやすくきめられて在るというのは何と不思議だろう。
外で十分働いても女は家庭へかえれば男のしらない雑用があって、疲労が激しいということは周知のこととなっているが、十二時間働いて、家へかえれば眠ることしか残されていない若い娘たちが、その間でもやはり将来主婦となったとき世間一通りのたしなみが身についていなければと心を悩ましている可憐な思いを、日本の女のいじらしさとばかり鑑賞していてはむごいと思う。働く娘たちは、体と心と精一杯その青春を社会のために役立てながら、その現実に決して自信をもちきってはいない。男に働く娘を妻としたがらない気持のつよくあることを彼女たちはまざまざと知っている。どんなに給料をやすくしてくれても女の結婚難はそのことからでは解決の見とおしはないのである。
この頃は早婚が奨励されていて、竹内茂代氏の説では女の適当な年齢は十九から二十歳と示されている。そして、よい母となるために女の生理の完全を要求せよ、と云われており、毎月おなかが痛むような娘はよろしくないとされている。こんな点からも、働く若い娘たちはおそらく心ひそかな恐怖を感じているだろうと思う。本年の初め、
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