五百名という見込みに対して求人は一万三千という有様である。小学校を出たばかりの少年たちの力も全国的に動員された上でのことである。職業紹介所は更に最近労務資源枯渇の現状に鑑み、銃後女子勤労要員制度というのを編み出した。十四歳から四十五歳迄の女子に三ヵ月ずつ期間を区切って午前十時から午後三時迄日給六拾銭で工場の労働をさせる。もともと家庭婦人の動員を眼目にしているから托児所の施設をも条件とし、女の労働力の社会的吸収と同時に、労務管理の改善をも計るのが趣意とされている。働き先は、この場合にも軍需産業が第一位を占めている。調査に対して答えたこれらの家庭婦人たちの就職の動機は、銃後奉公、遊んでいてはもったいないという云いあらわし方が多数を占めているけれど、大部分の主婦たちが今後長くつづけて働きたいという希望をもっており、収入のつかい道は子供のための貯金、家賃米代が主であってみれば、昨今の物価高につれそこに彼女たちの労働の現実の微妙な生きた必要がうかがえると思える。
そんなに急に、多数の女が時局産業に働きはじめているのに、金属工、機械工の最高の稼ぎ高でさえも女は男より三分の一から半分の給料しかとっ
前へ
次へ
全9ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング