日一心に働いている。今日の東京にそういう人が何千人いるだろうか。その女のひとたちに、この冬は炭がないということなのだろうか。社会のために必要な力を日々注ぎ与えながら、独身でアパート住居しているから、その女のひとたちの火鉢はつめたい灰でなくてはならないだろうか。
ふるえるような胸の思いがここにもある。だからこそ、今年の暮から来年へ向う日本の女の心は、年々歳々と等しいものではあり得ないのだと思う。女がその歴史の意味をはっきりつかんで、体と心で厳冬をしのいでゆかなければならない。女が永い永い未来の見とおしと自分たちの善意と理性への信頼を失わずに、炭がなければ体と体、心と心とをよせあつめて、若い働く女性の誇りに生き、明日を生み出してゆかなければならない。来年という年と、未来のためにもそこを最善に生きようとする私たちすべてに対して、心からの激励と祝福とがあってよいのだと思う。[#地付き]〔一九四〇年十二月〕
底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻
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