観念と感覚のきらめき、模索。二十世紀のブルジョア文学の最後の段階としてこれらの現象が生れました。同時にプロレタリア化した小市民の前進的な部分は広い幅でプロレタリア解放運動とプロレタリア芸術の動きに合流しました。そして、旧い王権は世界各国でその数をへらしました。
 第二次大戦後の世界は、一層深い傷と破滅を経験して、中産階級の没落はもとより民族そのものの自立性さえもファシズムの暴力に対する抵抗の過程でおびやかされました。しかも日本・イタリー・ドイツのように三国連盟して、東洋と西洋の平和を攪乱したファシズム権力に引まわされた国々の人民生活の惨状は改めていうまでもありません。第二次大戦はファシズムの非人間性と狂暴な破壊性についておそろしい教訓を与えました。近代戦争の無制限な戦線拡大は、戦争の非人道性をあらゆる人におもい知らせました。戦争を嫌悪する心、平和な状態で平和な人民生活を安定させたいという願いは、第二次大戦でどっさりの血を流した世界にあまねく感じられている現在の要望です。
 第二次大戦が殆ど地球全面を破滅におとし入れたという事実は、ヨーロッパにおいていわゆる戦後文学が第一次大戦後のように
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