稚いが地味でよい
――「芽生える力」立岩敏夫作――
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地付き]〔一九四八年六月〕
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 作者が添えた手紙でことわっている通り、まだ稚い作品ではあるけれどもリアリスティックな文学の筋の上に立っている。習作ではあるが『大衆クラブ』などにのせれば同感をもってよむひとは少くないだろうと思った。
 作者の心持が稚くても、ふっくりとしていて、描かれている農村の生活の細目も自然にうけとれた。ただし、主人公の青年の父親が、農民の生活を不安にする現実から、段々民主的な働きに目を向けて来てやがて積極的になってからのところが、割合安易にかけてしまった。アカハタをよみはじめ、黙って考えをかえてゆくあたりは、さもあろうと肯けるが、積極的になってから、あの父親は言葉まで急に若がえりすぎてしまってはいまいか。妹娘が兄のかくしておいたハタを紙型用にもち出して同級生に、とやかくいわれる場面はおもしろい。しかし、あとでアカハタが村へもっと入るようになってほかの娘も紙型用に学校へもって来るというところ
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