間、良人の両親の家に起臥《きが》は出来ないのか、と云う疑問が起るかもしれません。
 助けないのは、薄情からではない。親も、若い者達も、自分達の生活を、他人の厄介で営むような恥かしさには辛抱が出来ない。我々[#「我々」に傍点]が結婚するからには、我々[#「我々」に傍点]で生きて行くのだ、と云う、確信があるからなのです。非常な富豪とか、又、一部の交際社会、所謂派手者の間では、親から財産を分与され、二十一で、お雛様のような結婚をする男もないではありません。
 けれども、多数を占めている中位の青年男女は、結婚の問題が起った時、果して自分等は自立して、一箇の家庭を営み得るか否かと云うことを考えずにはいないのです。幸、女子が何か職業を持ってい、その収入と合わせれば、優に二人の生活は保障されると云うような場合、事は容易に運ぶかもしれませんが、婦人が左様なものも持たず、又結婚後、家庭外に職業を持つことなどをよしとしない意見を捨てない女性であったりした時には、男子は苦しい思を抱いて引下らなければならないようなことにもなるのです。
 米国のように、生活の緊張した場所では、最も右のように経済的事情が、若者の
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