でありましょう。十人十五人の中では、先ずあの四五人が、真個に自分とは話も合い、心持も調和する。そう、あの四五人の中では――誰と、次第に時[#「時」に傍点]が選択を進めます。そして、何時とはなく、双方がより多く会う機会も持ち、より深く知り合い、愛敬し合い、愛人となる場合が多いのです。
 人間が真実に一人の異性を愛した場合、結婚は次に来る最も自然な結果だと思います。自分のこれ程愛する者と、どうかして共通な、心も身も団結した生涯を送りたい。愛する者ともろともに[#「もろともに」に傍点]生きたいと云う切な願が起った時、人間が人間である間は、結婚ほか道がなく思われます。自分の愛も深まり、相手の婦人の愛も知り得て、始めて男子から、求婚を申し出ます。それに、諾、否を与えるのは、最後の女性の自由権です。多くの場合、彼女は同じ幸福に輝きながら手を与えるでしょう。けれども、又、多くの場合、種々な問題も起って来る可能があります。結婚は一生の大事です。互が、最も希望と将来の光輝とを期待することである丈、種々に考慮しなければならない点が、実際問題となって起って来ます。それによって、幾年かの婚約を先ず予備するもの
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