すけ合って、どうにか、この混乱のうちをぬけなければなりません。途中に、倒れるもののあるのは、この場合仕方がない。ただ、この先、おのおのの心のうちから、時々慈善事業に寄付でもすれば、富はいくら独専してもかまわない。悧巧に、経済状態を考え、子等さえ過剰にしなければ、自分の情慾に、何のはじも感じないでよい、というような、物の考えかたを根本から立てなおす為、私共は、力のかぎり、あきらかな光明と、素朴な叡智とをのぞみ、求めて行かなければならないのです。平静に思うと、真の愛と勇気とを以て人生に向かう時、私共の心から、つかれたもの、おとろえたものの存在が決してわすれられることはなくとも、意識の、真っ先に立って行く手を遮りはしないと思います。病人は実にあわれで見る目も苦るしい。けれども私共自身は、出来るだけ病から自分をまもらなければならない。或る人々の疲弊に対し、実にひとごとでなく感じ、考え、状態をよりよくする為につとめても、あのおのの心がけは、出来るだけすこやかに、たしかに、しかして、深い人生のよろこびの源となろうとするのが、真の道ではないかと思います。[#地から1字上げ]〔一九二二年十月〕




前へ 次へ
全5ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング