短歌
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)詠《よ》んで
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少し、読みためたのを、人に見てもらう。
母は、万葉調のが上手で、十一の時から詠《よ》んで居たから、流石に巧《うま》い。
私のとは、まるで気持が違う。
自分でよんで、自分でうっとりする様な歌は、どうしても、まだ未熟な私には、出て来て呉れない、それが口惜しい。
どうにでもうまく一つやらねばならないと思うと、じいっと座って居られない様な気持になって来る。
雑誌をよんだり、短歌集を引き出して見たりしても、どうしても、ハーッと思う様なのが見つからない。
情ない様な気がする。
腹が立った様な気持になって、さっきまで、何となし気が軽くて、母に甘ったれたり、笑ったりして居たのに、もうすっかり気が重くなって、只、短歌の事ばっかり考えて居る。
何も彼も、そう熱中しないでもよさそうではあるけれ共、どうせ、少し真似事《まねごと》位出来るなら達者になりたいと思う。こんな事にでも私の人にまけたくない気持が現れる。
底本:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
1981(昭和56
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