であると思う。親と子とが、ひとの前ででも、しゃんと互を傷けずに各自の意見を表示し得るようになれば、多くの家庭を今日重く複雑にしている面倒な気心のさぐり合いが減って、楽になるだろうと考えたのであった。
 ところで、この座談会では、多くの部分が婦人と職業との問題に費されたのであるが、私は本間氏が、娘さん達が独立して何か職業を持ちたいという心持はつよいが、さて自信をもって決行するところまでは行けないでいられる心持を評して、一般的に男はその職業で一家を支えなければならないから、職業に対し熱をもっているし「遊ぶという気持がない」と云い、夫人がすぐそれについて極めて自然に「どうしても、女よりも男の方が偉くなる訳ですね」と云っていられる点に強い注意を喚び起された。
 本間氏はつづけて女が職業をもてばそれだけ男の就職線にふみこむことになるから、問題だと考えられるに対して、二十二歳の久美子さんは、さすがに今日の社会の現実は、決して男にも夫婦が食えるだけの収入を与えていないこと、既に女は経済の必要から職業を持たねばならなくなっていること、婦人労働者の低賃銀と児童搾取のことにも触れておられる。
 私が心をう
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