」
と、必要な警告なら、与えてやらないのだろう。
愛のないこと。それが、若い心には、骨髄に滲み徹る。自分なら、恐らく、そのまま家へ帰ってしまったろう。それを、心持を忍んで、また、皆の裡に戻って来たおつやさんのしおらしさが、同い年であった自分に、いいようのない感銘を与えたのである。
おつやさんも、恐らく死ぬ迄、その時の心持は忘れ得なかったろう。
彼女が死んだときいた時、先生の心には、これほど短く一生を終るのであったら、あんなに辛くは当らなかったものをという思いは湧かなかっただろうか。
[#地付き]〔一九二二年六月〕
底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
1981(昭和56)年3月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「婦人之友」
1922(大正11)年6月号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
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