始めた。
手を握って居ながら叔父はまるで別な事を考えて居るらしかった。
彼は一層陰気な顔になってうつむきながら私を慰め様ともすかそうともしずに歩いた。
泣きじゃくる私と、考え沈む彼とはお寺の多い通りを多勢の子供達の驚きの的となりながらのろのろ、のろのろと、動いて行ったのである。
泣きながら私はぼんやりと大変お天気の温かな事を感じて居た。
外には雨が降って居た。
そして昼であった。
只それ丈が分って居る丈でどうした訳でその様な時に叔父が床に就いて居たのかまるで分らないが、私はその傍にゴロンところがって足をバタバタ動かしながら種々な事を話して居た。
――大変にその室が暗かったから多分雨でも降って居たのだろう。
私は種々喋った末何の気なしに甘えた口調で友達の一人が自分を酷めて困る事を告げ、或る慰めと同意をかすかに期待しながら、
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「ほんとうにいやな人なのよ、
私憎らしくって仕様がないわ。
[#ここで字下げ終わり]
と云うと、思いがけず私の延して居た腕に飛び上る程の痛みを感じた。
ハット思った心が鎮まると漸う私は彼に抓られたのだと云う事が分った。
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