突然非常に大きく、
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「嫂さん。
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と投げつける様に叫んだ。
苦しくて苦しくて堪らない息を吐くと一緒に夢中で出た様なその声は太く短くかすれて居た。
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「え?
え? 何ですか。
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母は体を曲げた様であったがあんまり恐ろしかったので私は隙き間から目を離して、しっかり瞼をつぶって仕舞った。
此の次はどんな声がするだろうと思うと、急に心臓の鼓動は激しくなり喉元で息をしながら動きもしずに立ちすくんで居ると、急に明るい光りが薄い瞼を透して感じられたのでハット思って目をあくと、目の前にはいつもより大変大きく見えた母が立って居た。
あんまり意外だったので、声も出なかった私は、ボンヤリ立って居ると、
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「まあお前は……
さあ彼方へ行って寝て居ましょう。
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と云いながら母は元の部屋まで送って来て、パタパタとたたきつけると、
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「今御用がすんだらすぐ来ますよ。
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とすぐ又独りぼっち置いて行ってしまった。私は暫く眠ら
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