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註。左肩にスエズ運河を船が通過するところ右下には英語でニッポン、ユーセンカイシャ、S・Sビンゴマルと書かれた今日で見れば小さい客船の写真がある。凡そ二十年ほど後に、父は再びこの運河を、このハガキに所謂我妹子と子ららやからを伴って通ったのであった。母は旅行記の中に、スエズを通った日のことを書いているが、このようなハガキが遠い昔自分におくられたことを果して思い出していたであろうか。
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    書簡(五)の一

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註。エッフェル塔のエハガキ。一九二九年の初秋には、このエッフェル塔にシトロエン6というイルミネーション広告が終夜明滅していた。父、母、妹たちはヴル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ール・ペレールのアパートメントに住み、百合子はヴォジラールの下宿の窓から、シトロエン6、シトロエン6、とせわしい明滅が、シャンゼリゼイの方に向って瞬くのを眺めた。
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    書簡(五)の二

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註。巴里、エトワールのエハガキ。後年、日本の女詩人与謝野
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