中国文化をちゃんと理解したい
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)[#地付き]〔一九三七年十月〕
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日本の文学者では、夏目漱石や鴎外などまでが、自身の文学的教養の中に中国文化のあるものを消化していたのだろうと思う。私たちの時代になると、伝統的な中国の文物については教養的に不足して来ているし、実際の生活感情からも遠くなって感情表現の手法としての影響もなく、「古い支那」に対して或るエキゾチシズムがのこされている程度である。新時代の中国の生活について最も多く知るべき筈でありながら、今日まだ十分知っていない。知るための十分な便宜をも欠いている。中国の文化に対して新しい理解と接近の機会をもち得るのはこれからであろうと、期待している。
私一箇の心持から云っても、中国の文化の様々な特色には強い興味と魅力を感じている。中国の建築・食物・色彩感・日常的商取引の道徳習慣など片々とした知識を材料として考えただけでも、中国の性格が自然に対しても積極的であり、人間の意志を表明すること憚りない傾向を示していることが興味ふか
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