ンあたりの淑女とは質が違っている。腰にピストルをつけ、カウボーイと馬に騎り、小学生のときからひとの台処で働かねばならなかったアグネスの強壮な体の中を奔放に流れている熱い血がある。一方に子供時代の境遇からアグネスは母親にさえ自分の愛情というものを言葉に出して語る習慣がない。野心家で空想家でやがて飲んだくれになり、家出常習であった父親と、短い生涯を子供を養うために働き切って栄養不良で死んだ母親との生活の観察。その母を扶けるために金や子供の衣類を稼ぎの中から仕送りして来る淫売婦である母の妹、性的生活は荒々しい生活の裡に露骨にあらわれて、少女のアグネスに恐怖と嫌悪とを植えつけてしまっている。「大人になるとほかの一切の大人がすることをする――性に没頭する! 何ていやらしい!」
 成長するにつれアグネスの骨の髄までしみ込んで来たことは「女は弱くて馬鹿だ。皆結婚して一ダースも子供を生んで男に指図ばかりされるんだ」という周囲の野蛮な現実に対する憎悪である。アグネスは、結婚している女より叔母のヘレンの淫売婦と云われる生活の方が遙に人間として独立した権利をもっているとさえ思う。「もし彼女に『自分が買ってや
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