来て見てもらえばいいけれ共。」
「でもまあ、体にはかえられないから二十日ほど行って来ましょう、
 ほんとうに。」
 千世子はポツポツとまとまりのない事を話した。
「いくら暢気だからって、
 これでも御主人様なんですからねえ、
 女中の事も考えなけりゃあ。」
 そんな事も云った。
 出る時にはきっと知らせて呉れと繰返し繰返し云って二人が帰って行ったあと千世子は行くか行くまいかとしばらくの間迷った様になった。
 又青い顔をして臭剥を飲むよりは短っかい間でも行って達者で居た方がいいしまたそんなにいやだと思って居る事ではないけれ共斯うやったままちょくちょく来る二人のためにつぶす時間をまとめても十分な時が作られる。
 こんなにあんけらかんとしても居られないんだからもう少し精力を増さなければいけないからとも思った。
 夕飯の時半分じょうだんの様に、
「今月中にねえ、
 私は小田原へ行って来ようと思って居るんだよ。
 お前にお気の毒だけど、せいぜい二十日位だから、辛棒して呉れるねえ。」
なんかと云った。

        (二)[#「(二)」は縦中横]

 まだ若い女をたった一人留守番にして自分一人
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