蛋白石
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)欠伸《あくび》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)(一)[#「(一)」は縦中横]
−−
(一)[#「(一)」は縦中横]
劇場の廊下で知り合いになってからどう気が向いたものか肇はその時紹介して呉れた篤と一緒に度々千世子の処へ出掛けた。
千世子は斯うやってちょくちょく気まぐれに訪ねて来る青年に特別な注意は、はらわなかった。
けれ共相当の注意を無意識の裡に呼び起こされるほどセンチメンタルな言葉を洩して居た。
細い背の高い体と熱い様な光りの有る眼とを持って眼の上には長くて濃い□□[#「□□」に「(二字分空白)」の注記]が開いて居た。
上っ皮のかすれた様な細い声は低く平らかに赤い小さな唇からすべり出て白い小粒にそろった歯を少し見せて笑う様子は二十を越した人とは思われないほど内気らしかった。
笹原と云う姓は呼ばずに千世子はいつでも
肇さんと呼んだ。
――○――
春の暖かさが身内の血をわかして部屋にジーッとして居られないほどその日は好
次へ
全27ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング