ていることを。
新しく採択された中華人民共和国の大憲章が、その第一章第六条、第五章第四十八条に「婦人を束縛する封建制度を廃止」し、母性福祉を約束していることは当然といいながら、その現実的な価値ははかりしれません。なぜなら、新しい中国の人民社会において、憲章の条文は実現されるものだからです。日本の政権が、こんにち言論を抑圧し、正義をまげて労働者階級を弾圧し、民主的発展を挫折させるために、捏造している幾つかの政治的事件の裁判でのように、人民の基本的人権さえも法律によってふみにじられることはあり得ないからです。
一九四九年十月六日の夜、わたしはラジオを聞いていました。北京からの日本語放送は、新中国の国旗について説明しました。赤地の左肩に輝く一つの黄色い大きい星に中心をむけて配置されている四つの小さい星は、労働者、農民、小市民、民族資本家をあらわす人民の統一戦線を語っているものであると。ラジオはその時、上海を中心として全生産が回復したというよりも、むしろ増大したことをつげました。同じ夜のモスクワ放送は、ソヴェト同盟の第三十二周年革命記念の前夜祭で建設を語る演説と心を魅する音楽を送りだしました。その夜に、わたしたち日本の八千五百万の人口は、次の戦争に利用することができるといっている人のあることを知りました。
尊敬する宋慶齢夫人。
一九五〇年における日本のまじめな人民の関心事は、全面講和によって世界平和に協力することです。パール・バック女史は、日本人は食べるものと住むところさえあれば、あとはどうでもよいのだという意味の意見を発表されているそうですが、人民の精神は決してそれだけではありません。もしそうであるならば、どうしてこんにちの人民の共和国が中国にありえたでしょう。わたしたちは、くいぶちをよそから貰うことでその飼犬にされたいと思っていません。日本の軍事基地化に反対なのは、アジアとヨーロッパの平和がなければ、日本の人民の生活安定があり得ないからです。
北京で開かれようとしているアジア婦人大会に、日本代表が出席できるかどうかにかかわらず、世界の平和のためには日本の婦人も彼女たち一人一人が闘っている生活の辛苦を参加章としていると思います。
一九五〇年における中華人民共和国の発展を祝し、革命の母たるあなたの一そうの健康と活動とを切望いたします。[#地付き]〔一九五〇年二
前へ
次へ
全3ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング