宋慶齢への手紙
宮本百合子
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(例)[#地付き]〔一九五〇年二月〕
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尊敬する宋慶齢夫人に。
中華人民共和国の輝やかしい一九五〇年の新春を慶賀いたします。
二〇世紀は、人類にとって、すばらしい人間的理性の勝利の世紀となりつつあります。一九一七年の十月には、地球の六分の一を占める地域にソヴェト同盟の社会主義建設が着手されました。そして、現在ソヴェト同盟は、その人民の、強大な実力と成果によって、人民の歴史の指導力であり、平和の守りてとなっています。帝国主義、ファシズムによって荒廃させられた東ヨーロッパの人民も民族の自立と人民生活の確立を方針として、人民民主主義の社会をつくりました。そして、一九五〇年は世界最大の人口をもつ中国が、中華人民共和国として発足しているという驚歎すべき事実によって、広大なアジアに全く新しい歴史の頁をもたらしました。即ち、世界の正直な人民は、戦争挑発をしりぞけ、自分の国のなかにおける専制的な権力とたたかってゆくために、量りしれないプラスを得たことを意味します。再び、一九五〇年という年への期待と歓喜を!
一九四九年九月二十一日から十日間、北京で開催された人民政治協商会議第一回全体会議の第一日に行われたあなたの演説が、日本で読まれています。「いまやこの国には活気があふれている。中国人民は、前進しており、革命の気にあふれている。これは、歴史の躍進と建設である」「孫逸仙の三民主義、すなわち民族の独立、人民の民主主義、人民の生活安定は、成功的に完成される確実な保証」があると語られたとき、演壇に立ったあなたの胸にあふれたであろう感動をわたしたちは感動なしに想像することができません。
あなたがた革命の指導者たちと、根気づよい中国の人民とは、この日までに、幾多の辛酸とおびただしい犠牲を堅忍しました。それらは、人類の誇りとなる英雄的な行動でした。いま、わたしたちが、中国人民の勝利に対して衷心からのよろこびと友誼の感情を語るにつけ、日本の帝国主義が、中国解放のために最悪の妨害的存在以外の何ものでもなかったという事実を思いかえさずにはいられません。しかし、中国の人々は人民たる真情によって諒解されるでしょう。その日本帝国主義が、日本の人民生活をもまた壊滅させ
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