家などを獲得する任務を示しているが、それは決して、小市民的自由主義へ向って、妥協によって多数者を獲得するのではない。この戦争と革命の時期を決定的勝利に向って闘うために、先ず労働階級の多数者ついで一般勤労階級の大多数が獲得されなければならないのである。
「モルプ」が、特に同伴者作家への働きかけを問題とし、ソヴェト同盟では「ラップ」が解消され目下綜合的で単一な作家団体のための組織委員会がもたれていることなどを引き合いに出し、プロレタリア文学における同伴者的分子の過重評価とプロレタリアートのヘゲモニーの曖昧化を導き入れることがあるとすれば、それは、最も恥ずべき小市民的日和見的見解としなければならない。例えば「ラップ」の解消は、革命以来過去数年間そのために闘われて来た文学におけるプロレタリアートのヘゲモニーが五ヵ年計画とともに確立され、同伴者作家が昔の「ブルジョア的過去と手を切って」急速にプロレタリア作家としての成長をとげたという事実が基礎となっている。その発展的段階に適合する組織として「ラップ」は狭くなったし、この指導部はブハーリン的な段階論を固守していたことによって批判されたのである。
作家同盟の成員が種々の層からなりたっているということは、作家同盟という一組織の内部でそれら様々の段階の作家たちが次第にプロレタリア作家として自分たちを強力に鍛え純化してゆくことを、既定の条件としているわけである。作家同盟のなかに、同伴者作家団などというものが別箇なグループをなして包括され得るという理解はなり立たぬ。作家同盟が特に同伴者「的」、或いは同盟者「的」作家を包含するという所以である。
また同伴者作家というものを考えて見ても、それは決して、プロレタリアートの課題を課題とする作家同盟の基本的な方針に離反したり、その到達点を引き下げて自身の低い段階を合理づけたりする態度を予想してはいない。そのことについては全く逆である。同伴者作家の本質は、自分の社会的・階級的制約性に制約されつつも、あくまで自分からプロレタリア文学の前進とその本筋とその高まる水準に適合するために努力しつづけるところにこそあるのである。
共産主義的作家も、同盟者的、同伴者的作家も等しくなさねばならぬことは「同盟の最も進んだ到達点に立って、運動に新しい発展を与える如き創作活動を志す」(第五回大会決議)努力である。
同志蔵原は、「プロレタリア芸術運動の組織問題」の中で、繰返し繰返し組織のデモクラシーを、ボルシェビキ的指導で貫徹することの絶対的必要を力説している。
最後に、これらの批判中に示されている中條の論文と指導部との関係についての関心に対して一言したい。
同志神近は、中條の「左」への危険を含んだ論文をもって、「同盟が過去一年間に堆積して来た指導理論の一部の偏向を極端な形で現している」と云っている。しかしどのような根拠から作家同盟の指導理論には左翼的偏向があると云い得るかという具体的事実については説明していない。
同志神近は、作家同盟が画期的な実質的再編成として組織活動に着手したことを意味しているのであろうか? あるいは文学におけるレーニン的段階の確立のための推進、文学における党派性などについての理解が、彼女には「極左的」な響と感じられているのであろうか。
もしそうであるとすれば、同志神近は「作家同盟の目的は何であるか?」(『日日』の月評)という自身の文章によって、半ばの答えを提出していると云える。同志神近はその文章によって、作家同盟が大衆的組織であること、ひろいプロレタリア文学の影響力によって各層の大衆を組織するのが作家同盟の目的であろうということをほのめかしている。
大衆をプロレタリア文学の影響の下に組織するためには、創作活動と組織活動とがなされねばならぬ。大衆に働きかけ企業・農村からの新しい文学の働きてをひき出し、実際に同盟を大衆的組織とするためには、ここにもまた旺盛な組織活動がなされねばならない。既成の作家たちが、刻々うつり変る客観的情勢の下で真に闘うプロレタリアートと共に前進し、新たな段階に自身を再教育するためにも、組織活動は重大な意味をもっているのである。
プロレタリア文学における政治の優位性については、すでに明らかにされている。
同志林、神近などによって、プロレタリア文学運動における同伴者性が特に強調されていることをわれわれは注目しなければならない。プロレタリア文学運動における同伴者的作家というものを、先に述べた規準によって正当に理解しないならば、この戦争と革命とへの時期において、日本のプロレタリア文学運動を、敵の前に武装解除させるところの、明らかな右翼的逸脱への危険を示すものとなるであろう。
『朝日新聞』の「我等の運動」において、同志藤森は、作家
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