大切な芽
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)暢々《のびのび》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九二四年六月〕
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私は、友情というものに多くの夢をかけている者だ。どうかして一人でも一生の間には、これこそ自分の心の友として悦びや悲しみを倶にし得る人を得たいと常に思っていた。けれども、子供の時から私の生活は両親の保護でぐるりととりまかれ、その状態が長く続いたので、本当に自分の感情を流露させて深く交際する人を見出すことは難しかった。一つには、性格の傾向や趣味の問題もある。何かで読んだ通り、こちらで求めるときには、却ってよい友などは見つからないものなのかもしれない。一時、私は同性間の友情に、随分悲観的な見方をしたことがあった。女学校時分に相当親しかった友達などでも、だんだん時が経ち、生活の様子が異って来ると、どうもぴったり心が喰い合わない。正直なことをいうと感情を害し、自己の生活などを全然客観し得ない、あるままの而も綺麗なよそ行きな部面だけを照し合わせていき合って行かなければならないのは、私にとって苦
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