人々は皆この際やってしまう方がよいと云う人さえある。社会主義がそれで死ぬものか、むずかしいことだ。だまし打ちにしたのはとにかく非人道な行為としなければなるまい。
国男の話詳細。
小田原養生館滞在、一日の朝、前日鎌倉へ行こうとして、山田氏に来られ駄目になったので、出かける。汽車、電車が案外早かった為、予定の一つ前のに間に合った。大船では発車、三分前、プラットフォームに出て歩いて居たが、もう入ろうとして車内に入ったばかりのところに、ゆるい地震が来ひきつづき、立って居られないほど、左右に大ゆれにゆれて来た。彼は、席の両はじにつかまり、がんばり、やっと、一次のはすぎる。もうそのとき、今迄居たプラットフォームはくずれ、出ようとした汽車の車掌が血まびれで、何処からか這い出して来た。下りの方のプラットフォームには、沢山の人が居、それが泣き叫ぶ声、救を求める声、言語に絶す。それから国男はすぐ汽車を出、レールにつかまって第二のゆり返しをすごす。それから鎌倉の方に行くものを誘い、歩いて、トンネルくずれ、海岸橋陥落のため山の方から行く。近くに行くと、釣ぼりの夫婦がぼんやりして居る。つなみに家をさらわれ
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