ち自己完成主義であらねばならぬ。
自己完成は、真と一致したものであらねばならぬ。
私は、箇人主義を称える多くの人々の心を疑う。
彼の人々は、至上に自己を愛しながら自らの心を痛め、苦痛、不愉快を日一日と加えて行くではないか。真から一歩一歩遠ざかるが故に煩悶はますのである。
思いがけぬ醜い仮面の陰に箇人主義の真心は歎いて居る。
自己完成に思い至らぬ人の心をかこって居る。
私は、何のはばかる物もなく、箇人主義は即ち自己の完成主義であると叫ぶ。
永劫不変の真の中に、絶えずえんえんと焔を吐く太陽に向って私は、斯く叫ぶのである。
真の幹に咲く、箇人主義の花ほど偉大なるはない。実る自己完成の果実は、千万人の喉をうるおわす宙を蓄えて居る、と。
底本:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
1981(昭和56)年12月25日初版
1986(昭和61)年3月20日第5刷
初出:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社
1981(昭和56)年12月25日初版
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2009年1月29日作成
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