第であった。きのう知らないばかりか、きょうになっても大荒れの必然はよく理解されまい。何故なら、普通の人の感情では質問の順番が、どうしてそれほど重大なのか、結局前もって告げられていた通りの順で、ともかく過ぎ得たものを何故一応揉まなければならないのか、納得しにくいのであるから。
所謂選良たちを選び出している一般人が、傍聴人となって議事堂の内にあらわれているわけなのだが、これと議員と議会というものの関係は、現実とはちょっと違った風に扱われているのが議事堂内で感じられる実際の空気である。議員は傍聴人というものを、はったりをきかすときだけ念頭に浮べるのかしら。万事、聴かせてやる、工合に塩梅されているのも、独特であろうと思う。
さて、漸く各大臣も着席し議長から開会が宣せられた。指名にしたがって米内首相が登壇した。悠《ゆっ》たりとしたモーニング・コートの姿である。その恰幅と潮風に鍛えられた喉にふさわしい低い幅のある荘重な音声で草稿にしたがって読まれる演説は、森として場内の隅々まで響いた。どことなしお国の訛が入る。
つづいて桜内蔵相。内容はともかくとしてやはり声はよく耳に入った。畑陸相が登壇す
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