れた。そしたら婦人席のわきにいた守衛の一人が、手洗いに立つならば今のうちに、という意味をいったそうで、数人が立ち、隣席の三人づれも立った。程なく三人の別な女のひとが来て、そこは先着の人がいますというのもかまわず上の守衛がいいといった、出た人には代りを入れるとことわったのだからといって腰をおろしてしまった。婦人席の傍に立っている守衛は、上のひとが独断でそうしたが仕方がないとごちゃごちゃいっているところへ、先刻の三人づれが戻って来た。わり込んで腰をおろした女の人たちの二人は、守衛さんが云々とそれを楯に動こうとせず、先着の一人が化粧の顔に怒気を浮べて、わたしはひとの席までとっては、よう座りませんからと啖呵を切るようにしたら、守衛も、ここのところは先着の人に坐らして下さいと仲に入り、二人はぷりぷりして出てゆき、少なからず興奮した三人づれの人たちが辛うじて元へ納まった。傍聴席はどこも退屈だらけの折柄、衆目がこの小競合の上に集った。女のひとは図々しいもんだね。そういう男の声もした。
五、六時間の席に堪えない習慣で暮している日本の婦人たちの体力や着物の条件についても女として考えさせられるし、議会傍
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