うようなところで、一きわ張り上げられる小川代議士の声も、やはり活溌な反応をよびおこすのであった。
 中等学校への入学試験が内申制になってから、一人の子供を上の学校へ入れるために百円から千円の金がいるようになった、というような記事が、昨今は世人の注目と関心とをひいている。小川代議士の質問にちっともそういう面がとりあげられなかったのは、他の代議士との質問の分担上の関係からであったのだろうか。

 質問に答えるために米内首相が再び登壇したが、それに対する議場の雰囲気は、米内首相にしろ、これまで海軍大臣として受けて来た風のあたり工合とは、おのずからそこに微妙なちがいの生じていることを直感しただろう。或はそんなことは、立場としての当然のこととしてのみこんでいるのかもしれない。忽ち日本議会の輝かしき名物である彌次が飛び出した。ダメだ、ダメだ。笑いに混ってそんなこともきこえる。もっと軍人らしくやれ! そういう声もする。傍聴席の右側下政友会中島派というあたりが発源地らしい見当である。黙ってろ! いわせろ! そういう罵声も交々であった。
 米内首相の答弁ぶりは、一つも気の利いたところのないものであるが、
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