の間には、私たち人民が、ふむ、こんな風か、と読みすごしてはならない、極めて微妙、深刻な、何かの底流が潜んでいるのではなかろうか。
 私たち日本の人民は、やっとこのごろ、自分たち人民としての自信と主動性とを理解して来たような段階にある。漸く、永年強いられて来た欺瞞に盲従する習慣から脱して、少しずつ、人民の生存は人民の知慧、判断、行動で守り、平和と安定を日常にもたらそうとして動きはじめたところである。経済、政治、文化の全面にわたって人民としての要求を貫徹し、日本の民主化を徹底させるための人民戦線、民主戦線ということが、私たちの現実的で発展性ある方法として、身近いものとなりつつある。人民は、自分の全生活について自分たちで判断・配慮し、分別してゆくことが、とりも直さず民主の政治の実体であることを学びつつあるのである。
 この頃の毎日は、そういう意味で、日本の私たちにとって全く歴史的な日々となって来た。それだからこそ、一日一日のうちに起るいくつもの事象について、私たちは極めて注意ぶかくなくてはならない。聰明に現実的に、自分たちの新しき構想の完成に努力しなければならないのである。
 こういう心もち
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