人民のために捧げられた生涯
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)[#地付き]〔一九四六年九月〕
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尾崎秀実氏が獄中から書かれた書簡集がまとめられることになった。それについて、短い文章を書くようにとの依頼をうけた。
尾崎氏とその家族のために、永年心をつくしていられる友人たちは、決して少くないのである。それを思うと、私が何かを書くということは、ふさわしくないと遠慮された。しかし、夫人の御気持からもときき、『人民評論』二月号に「愛情は降る星の如く」という題で掲載された尾崎氏の書簡の一部を再びよみかえした。第一審判決後の第一信に「裁判長の趣意は、今の私の立場も心境も充分認めた上、命をもって国民に詫びよ、というのです」と平静に告げられている。そのくだりを読んだとき、私の心には一つの叫びがあった。「命をもって詫びよ。それは尾崎氏らを殺した人々に向ってこそ、国民が今日求める償いである。」そして、私は諒解したのであった。この心もちに、自由と正義を求めるすべての人民の情熱が凝っているのだ、と。
世界に類のない日
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