人生の共感
――求められる文学について――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)所謂《いわゆる》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)わが身[#「わが身」に傍点]一つである
−−
今日、私たちが文学に求めているものは何であろう。求められている文学とは、どういうものだろう。
部分的ないろいろの要求というものは、いつもあったし、これからもずっと自分にもひとにも持たれつづけると思うが、特にきょう私たちが文学に求めている何かは、文学の本質にふれた何かであり、人生に向う心持の底の方にある何かの反映であるように思われる。日々に生きている感情のなかでジリッと何かが求められているのである。それが、あの作品、この作家への箇々の不満という風なものと直接結びつかず、云ってみれば、この人生とめっぱりこな気持のなかで求められている感じなのは面白いところであると思う。
多かれ少なかれ、今日の現実は人々の心に文学への要求としてそういうものを目醒めさせているのだろう。だから、室生犀星氏のような、ああいう意図的に小説の世界を小説の世界としてこしら
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