らしい対等の権利を具体的なものにするなら、もうきょうの社会のなかで民法の条項が改正されただけでは意味がない。男と女とがその勤労によって生きなければならない労働に関係あるすべての法律で、男女は平等になり女が女であるという意味での母性保護が実現しなければならない。だから、労働組合が、口ぐせのように勤労条件の要求の中に男女平等と母性保護をくりかえしているのは、深刻な現実をてりかえした真実の声である。この要求は、直接職場をもっている婦人ばかりでなく、勤労者の妻、母、娘すべてにかかわる問題である。結婚と家庭の問題にじかにつながっている。何故なら、きょう改正されたブルジョア民法としての新民法を、きょうの現実のなかで一般婦人に実効のあるものとするには、実際の勤労条件の改善に裏づけられなければ、殆ど偽瞞に終らなければならないのだから。
 私たちの今日の生活は破壊と建設の形容出来ない混乱と、それに加えて、民主的推進のきわめて複雑な道の上にある。憲法を見ても新しい「民主憲法」は不思議な矛盾をはらんでいる。天皇というものの全く特殊な規定が、この主権在民といわれる憲法の中にある日本の封建的な尾は、伝統の中に巨
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