お茶をにごしているかとさえ思えます。
これは現代の中学生の生活の内容が、おとなとまじって、たいへん複雑になって来ている証拠です。十一府県の部分的な調査でさえ、中学生たちの中「働きつつ学ぶもの」が四一五二人、「長期欠席」は六〇一〇人でした。東京の朝の街に四時ごろから納豆をうり歩く十歳から十五歳までの少年たちがふえ、全国で労働している少年は一〇五万人もあります。少女はまた昔のように紡績工場に働き、売られて行く子もふえました。
この春中学校を卒業しても就職できなかった多勢の少年、少女とその親とのきょうの暮しは、どんなこころもちでしょう。
母たちが「うちのこだけは」と個人のがんばりでりきむだけでは、未来の大人である子供の生活にあかるいみとおしを与えることはできにくくなるばかりです。
母と子も「どうせ、うちなんか、金もないんだから」とあきらめてかかる習慣を、どういう場合にも、つけないことが大切です。一人の人間が生きるために働くこと、そうして社会人として必要な教育をうけること。それは当然の権利なのだから、母も子も、生活を着実に見まわして、そこにある可能を発展させてゆくために協力する時代にな
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